今回は囲碁に関するお話

今から200年ほど前、江戸時代においては本因坊をはじめとする家元が「名人碁所」というポストを争った。

名人碁所は当時の囲碁界を束ねる地位。

その就任には当時四つ存在した家元全ての同意が必要であり、それに足るだけの実力が不可欠だった。そのため、名人碁所に当たる人物は現在までの200年において8人しか存在していない。

そして現在、その9人目に名を連ねる可能性が最も高いとされているのが井山裕太四冠である。

井山四冠は7月に行われた本因坊戦で芝野虎丸王座に勝利し、1998年の趙治勲(現・名誉名人)に並ぶ史上最多の10連覇を達成。

また去る8月、碁聖戦にて一力遼天元を3勝2敗で制し、タイトルに復位。
飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこのことであろう。

さて、今シリーズは6月、岡山県倉敷市真備町地区で開幕した。

真備町は囲碁を我が国に伝えたとされる奈良時代の政治家・学者の吉備真備ゆかりの地であり、また2018年の西日本豪雨による被害が特に大きな地域のひとつでもあった。

そのため、開幕戦は真備町地域の人々へエールを送る意味も込められていたのであろう。

その中で特に大きな意味を持つのが若手棋士たちの存在だ。

2021年現在、32歳の井山四冠は2016年に史上初の七大タイトル同時達成を果たし、翌2017年にはふたたび全七冠を達成。

七大タイトル獲得が通算52期となり、自身が持つ歴代最多記録を更新中だ。

その背中を、現在名人戦で戦う一力天元と、芝野王座、許家元十段の「令和三羽烏」が追う形となっている。

井山四冠は対局前、「自分が簡単に負けてしまうようでは彼らにとっても良くない」と語り、彼らの壁として立ちはだかる。

壁や目標というのは、高ければ高いほどそれを乗り越えるためにいっそう努力する。これはどの世界でも同じだ。
絶対王者を筆頭に、新たな風がより高いレベルでの囲碁界をけん引していくことに希望を持てる。

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